第5話

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 どれだけ経ったのだろう。きっとさほど時間は流れていないんだろうけど、感覚としてはすごく長い。  お互い、何も言わずにただ立って、雨音と雷を聞いていた。僕は雷のたびに、まだアゲハが蝶に戻っていないことを確認していた。 「目を閉じて、蝶のときのこと思い出してみ――」 「だめだよ」  強くはないけど、でもはっきりとした声に僕の言葉は遮られた。 「アゲハ?」 「だめ、だよ…」 「え?」 「元に、もどれないよ…」 「そんなの、やってみなくちゃわかんないよ?」  実際、アゲハは人間になったんだから、蝶に戻ることもできるはずだ。 「むり、だよ!」 「何で!? 何度でもやってみようよ!」  言った勢いで、両手をアゲハの肩に伸ばしていた。手探りで肩を掴む。   「アゲハは蝶なんだよ? 人間のままでいいの!?」  細い肩を掴む両手に力が入る。 「このままじゃ、駄目だよ!」 「なんでだめなの!?」  叫ぶような強い声。    僕はたじろいだ。 「なんでって……」 「だって!」  Tシャツが引っ張られる。アゲハが掴んだんだ。 「だって私、かいとといっしょにいたいのに!」
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