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『あ、伊達さんにはナイショですよ?俺が勝手に動いてんですから。』
部下じゃなくなったあともずっと、いつだって彼女のこと気にかけてる。
そこに、かつての親友の身内という意味以上の感情が含まれていることを認めたがらないのは。
それに名前を付けるのなら、罪悪感でしかないから。
だから。これ以上恨まれるんなら俺ひとりに。
いつもの釘を刺すこと忘れずに、半ば一方的に通話を切り上げた。
そのまま携帯をジーンズの尻ポケットに突っ込んで歩き出す。
向かう西の空は、墨を流し込んだように黒く染め上がった色に覆われて不穏な雲行き。
アンタが帰る頃、降り出さなきゃいいけれどなんて、誰もが急ぎ足になる雑踏の中、自分も進む足を速めた。
この束の間、まだベッドの中で微睡んでいるであろうアンタに、ささやかな休息が訪れること願って…。
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