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信じるものはシステムのみと公言して憚らないカワリモノ。
そんな彼が心を許した数少ない相手として、傍に置いた元麻薬探知犬。
どこへでも連れ歩く姿は、ここ「東京湾国際空港」の名物となった。
ハルのほうも、初めて得た独り占めできる存在に、これまでの人(犬)生の分を取り戻すかのような甘えようだった。
そうまで慕われれば、あの彼の溺愛ぶりも仕方なかったのかもと、この同じ麻薬探知犬として訓練中の『ユーヤ』と名付けられたラブラドールレトリバーと出会ってから思えるようになった。
クリームの毛色になめらかな被毛、思慮深げな濃い胡桃色の瞳。
ハルの血をひくユーヤは、本当にハルによく似ている。
自分を呼び寄せたまま、暫し考え事にフリーズした僕の手に、ユーヤがどうしたのかと問いたげに濡れた鼻を押し付けてくる。
「あぁ、ごめんよ。ぼんやりしてた。」
真っ直ぐに自分だけに向けられる視線、その絶対的な信頼。
彼の瞳に自分の姿はどんなふうに映っているのだろう…?
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