SSS++

Hello world

ハルがここにいなくてよかった。
人間の心の動きや言葉に人(犬？)一倍敏感なあのコは、自分の飼い主のいないところで交わされる会話にさえ逐一反応している節があった。

まぁ、いくらなんでも飼い主に言いつけるとまでの芸当には至らないものの、離れた場所から『そんなこと言ってていいんですか？』なんて責めるような、抗議の混じった瞳でじっとり見つめられて、挙句の果てには『仕方のないヒトたちですね』と言わんばかりの深い溜め息まで溢してみせるのだから。

人間が揃って気まずい思いに顔を見交わしたことも一度ではない。
そんな光景が、まるで昨日のように懐かしく思い起こされる。

彼の襲撃は、この湾空に流れた一年という不在の月日を一気に巻き戻したようだ。