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口元をいつもの穏やかな笑みの形にして、向けられてた彼の視線。
細められた眦から発せられたそれに、さっきまでの熱は微塵も感じられない。
暫し絡み合わせたあと、俺の方から不自然じゃないようにそっと逸らした。
「…ふーん。相手があすかちゃんでも?」
「それはそれは。若いふたりでお似合いじゃないか。」
「なにそれ。縁側で将棋打つじーちゃんみたい。」
小さく鼻で笑って憎まれ口返しても、その柔和な笑顔はちっとも変わらない。
整え終えた…といっても、いつもどおりトレードマークのアロハシャツを身に纏って、隠れて溜め息ひとつ。
未練がましいとは自覚しつつ、再び彼が横たわったままのベッドの傍らへ立ち戻って、掠めるようなキスをその薄い唇に落とした。
拒まれることはないけれど。
飽きるほどの情事のあとで、それ以上受け入れられることもない。
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