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「……。」
ジストは自分より大柄のその男子生徒を睨みつけるように見据えた。
臆するなんて、ない。
少なくともこの、目の前のバルバレスト人には…。
「お前、『あの』ヴァリス大佐の養子なんだって?」
ジストが所属するこのクラスは士官学校騎士養成クラスの中でもトップクラスの実力者が集まるクラスだ。
ちょうど一か月前に編成され、今までの座学の期間は実力者ぞろいの生徒同士の中で様子見がなされてきていた。
ジストはそんなクラスで異質な存在だった。
何せ、普通は中等学校から選抜されたもの達が集まるクラスに、中等騎士養成課程をすっ飛ばしていきなり入ってきたからだ。
そんなことが出来るのは、軍関係者の推薦がある場合か、選抜試験でよほどの結果を残した場合だけ。
ジストは推薦だ。
しかも、その推薦者が『戦艦落とし』で名を馳せる女騎士、
サイリス・ヴァリス大佐となれば注目されるどころの話ではない。
出自、実力。
すべてが謎。
さらにその黒髪は、遥か極東に住まいバルバレストでは『野蛮人』と忌み嫌われる黒髪の民族『ヤマト』のもの。
この一か月間でジストが受けた視線はどれもこれもネガティブなものばかりだった。
そして、クラスのヒエラルヒーが形になりつつある今、見事その階層の上位につけた少年がジストの目の前におり、異端者の『品定め』が行われようとしていた。
「ああ。」
ジスト・ヴァリスは言葉を返した。
勝つつもりはないが、引くつもりもなかった。
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