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勝つ。勝利。
当たり前だ。少なくとも自分は目の前にいる純血派の奴とは違う。
ジストには確信があった。その確信自体はけして驕りではない。
ジスト.ヴァリスという人間の性格からして相手の実力を知り、自身の実力と照らし合わせた上で冷静に判断した結果だった。
〈準備はいい?〉
アベルの通信にジストははいと答えた。恐らくクラッジスの方はやや興奮気味に答えただろう。ジストがこの一ヶ月で観察してきたクラッジスや他の純血派クラスメートの性格を踏まえて、そう予想した。
彼ら、純血派は実直だ。恐ろしいほどに。故に、自身の存在意義を侵しかねない存在に対しては猛烈に嫌悪する。クラッジスにとってのジストはそういう存在であった。異民、しかも遥か東方。未開も未開のヤマトの血を受け継ぐ者と教室を同じにするなど彼に耐えられるはずもなかった。
事実、クラッジスは少し息巻いていた。冷静であれと教えられているが、ジストに相対する彼の心はさも自分が純血派の代表で有るかのような自信と錯覚をクラッジスにもたらしている。
だからこその大剣である。帝国純血派の証だ。
〈はじめ!〉
アベルが戦闘開始を告げた。
ルールは単純だ、互いに相手を無力化すれば勝利である。
「………。」
対してジストは冷静だった。ルガーのお喋りのおかげというわけではないが、戦いに際してはある程度は高ぶる精神が少しずつ研ぎ澄まされて行く。
ジストはフットペダルを踏み込み騎体の背にあるスラスターを噴かした。グランセルのフルノーマルなので飛行は不可能。しかし、地表面を滑空することでブリッツフレームは高速で移動する。
クラッジスとジスト。彼我の距離は一瞬のうちに縮まり、開始僅か5秒ほどで大剣と短刀が交わった。
ブリッツフレームが持つ内燃機関(リアクター)から得るエネルギーを利用し、接近戦武器はその切れ味を高めている。交わりの間に火花が散る。
高圧エネルギー体同士が反発しあい、エネルギーの光が火花のように見えているのだ。
観戦していたほとんどの生徒達がクラッジスの勝利を疑わなかった。クラッジスにはそれだけの実力があり、実績もある。しかし、それだけに最初の交わりから次のジストのグランセルの動きに皆は唖然とした。
ただその中で、ルガーは不思議と納得し、またにやと笑った。
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