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「な………?!」
クラッジスは一瞬敵であるジストのグランセルを見失った。
だが、すぐにその姿を捉える。ジストはクラッジスの大剣を受け流し、騎体をかがめることでグランセルのカメラアイから逃れたのだ。
当然ながら、クラッジスがそれを完全に見逃すはずもなく、手に持つ大剣をジストに叩きつける。
ジストの動きは軽快で意外なもの。しかし、クラッジスを幾分か動揺させたにしても、完全に欺くことは出来なかった。
「この程度で………!」
クラッジスの大剣はごう、と音を立ててジストを狙う。多くの観戦者がジストの敗北を予感した。
そんな瞬間のことだった。
かん。
と、硬い音がクラッジスのグランセルに鳴り響いた。それはジストのグランセルの腰部に装備されているワイヤーアンカーがクラッジスを捉えた音だ。
腰部から放たれる二本のワイヤーで二騎のグランセルは結ばれる。本来ならば構造物に打ち込み、騎体を安定させたり移動のために使われるものでブリッツフレームの動きを簡単に止められるものではない。しかし、ジストの目的はそれではない。
「………!」
大剣がジストを捉える瞬間。ジストは騎体のスラスターをめいいっぱい噴射し、クラッジスから見て左側へ移動した。しかし、ワイヤーでクラッジスの騎体に繋がれているジストのグランセルはワイヤーの長さ以上は移動することなく、クラッジスの騎体を中心に反時計回りに最小限のモーションで背後に回ったのだ。
この間、一瞬。
大剣は空を切り、地面を抉った。
背後をとったジストはナイフをクラッジスに向ける。
ジストは半ば自分の勝利を確信したがここでクラッジスも意外な動きに出た。
「させるか!」
クラッジスは背後を取られた時点で大剣から手を離したのだ。これにより転回は容易になりクラッジスの騎体の拳はギリギリでジストのナイフと交差するように互いを削った。
間一髪でクラッジスは防いだのだ。
しかし、さらに次の一瞬だった。
クラッジスは空を見た。
いや、見えた。
突き出した拳と腕をジストに取られ、一瞬の隙をついての一本背負いがクラッジスに決まったのだった。
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