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オレがこのまま勝ち上がったら、間違いなくあの女と決勝で当たる。
町内の遊びだと思ってたけど……面白くなってきた。
あいつがどういうやつか知りたくて……足を前に踏み出す。
「安藤、行くぞ。」
「…………。」
歩みを促すも返事がない。
オレの声が耳に入らない程、羨望の眼差しをある一点に注いでいる。
……なに見てる?
安藤の視線の先を辿ると、一組の中学生くらいの男女が仲睦まじく手を握り合い談笑していた。
「………………。」
あいつの視線を遮断するように正面から覗き込み、声をかける。
「なに?おまえ……手、繋ぎたいの?」
「えっ!?」
目を見開き、耳まで真っ赤に染まるあいつを柔らかく見つめ、右手を差し出す。
あいつの左手がオレの手を包み込み、指と指を絡ませた。
嬉しそうに口角を上げるあいつを横目で見下ろした後、顔を背ける。
オレの顔も、隠せない程ニヤついていたから……。
安藤の手を引っ張るように歩を進め、さっきの女の前で立ち止まる。
と、女の隣に先程肉屋の前でオレに話しかけた男。
……あいつの連れ、だったのか。
顔を少し傾け、話しかけた。
「……あんた。バスケ上手いんだな。」
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