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納税する作物を麻布に詰めて、家を出た。
「今日は酒が飲めるな」
なんて隣で笑うドーランは、大人びた顔付きでがっしりとした体格をしている。
そのためか、三十路に見られることが多い。
実際は俺よりも5つ上の23歳なんだが。
「それ以外にも買うものあるだろ」
やんわりと釘を刺しておく。
「まあ、固いこと言うなって。真面目な俺らにもたまには娯楽があっていいだろう」
確かに酒を呑むのは大衆的には娯楽であった。
しかしクルトは下戸だったため、クルトにとっては娯楽とは言えなかった。
家から一時間も歩くと町が見えてきた。
お世辞にも活気づいているとは言えなかったが、最低限の買い物は出来る。
役所で納税を終えてから、今ではすっかり常連客となった雑貨屋に向かった。
いい加減なところもあるが、大抵のものが揃っている便利な店だ。
店主は40代の親父だ。
もともとドーランと知り合いらしく、いつも俺をそっちのけに話はじめる。
その間俺は生活用品を選ぶのだが、今日はあるものに目が止まった。
3年前の新聞だった。
そこには俺と同じくらいの年齢の青年が写っていた。
記事によると、先王が老体で政治を行うのは難しくなったということで、王子があとを継ぐそうだ。
「あの子と……似てるな」
夢で見た男の子と面影がそっくりで、なんだか救われたような気持ちになった。
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