物語:手と手を繋いで

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手と手を繋ぐ、 初めて君に触れたあの日と今を繋いだ、少しも変わらない暖かな温もり 手と手を繋ぐ、 今この瞬間に繋ぐ二人の心。たった一つの無邪気でがむしゃらで、大事な大事な気持ち 手と手を繋ぐ、 何十年先の未来に繋いでく、二人だけの思い出 この手が今まで触れてきたもの。たくさんの形や大きさがあったけれど、君の手ほどカサカサでボロボロでとても小さな手はなかった。 痛々しいほどの荒れた手先で、秋や冬には擦りきれたように出血がひどくて、デートの日でさえ、バンソウコウだらけだった時もあった。 …覚えてる?? 君はそんな手を見せたくないのか、最初は僕になかなか手を差しのべて、繋いではくれなかったことを。 手を繋ごうとしたら『嫌だね。』なんて、アッカンベして逃げちゃうこともあった。 きっとあの時、君はどこかでその手を後ろめたいって思ってたんだよね? …でもね。 一回もその手が嫌いだなんて、僕は思ったことなんかないよ? むしろ好きで好きでしょうがないんだ。 家事に向かないその小さな手で、風邪を引くぐらい寒い日の食器洗いや、氷のように冷たい洗濯物を干す君の手… 君の痛みや辛さ、全部含めて『ずっと離したくない。』 …そう思えるからこそ、僕は君の隣にいて、この大好きな手をそっと握っていられるんだ。
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