物語:確かな声

2/2
前へ
/44ページ
次へ
空に広がる一面の青空… 今日も人はそれぞれの道を歩き、また一歩確実に成長してゆく…       繰り返しの日常の中でモノクロにさえ見える殺風景な人ゴミで溢れ返った電車ホーム…   なんでもない一日の始まりがいつものようにここから始まる。     何気ない会話の声…       かすかに聞こえたその会話の声は、聞き覚えのあるトーンの調子。 特徴のあるその声は、耳の奥に残る懐かしくも優しい響きの声。   少し離れた電車を待つ人ゴミの奥でたしかに聞こえた。   まさか…   そう頭で理解するよりも一足早く人ゴミをかき分け、自然と疾走し始める僕。 足はもう止まらない。 気持ちは高まる一方…     なぜだろう??… 君の事なんかとうの昔に忘れてしまったハズなのに…   今さら君に会っても交わす言葉一つ見つからないくせに…   体は…心は… ドキドキして張り裂けそうなほど鼓動を打って頭に話しかけてくる…   会いたい… 君に会いたい… ただ君の姿をこの目にたった一度だけ写す…それだけでいいんだ…   想いと裏腹に絡まる足… 他人の目も気にせず、ほころんだ手を見るうちにこぼれ落ちる暖かな涙を拭い、再び走り出す僕…   ひたすら叫ぶ君の名前は… 今、君に聞こえるかな? 聞こえてるのかな???     忘れかけてた小さな思い出を片手に必死で辿り着いたたった一つの大切な想い…  幻聴なのか神様のイタズラなのか…駅のホームを走り抜けていく僕のその姿のはるか先…たしかにいたはずの君は………               …はよぉ… 『おはよう!朝だよ!』 たしかに…いた。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加