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「兄さん…この人の言うことはスルーで大丈夫です。
あの…よかったらこの村のことについて少し教えてもらえますか?」
「あ、は、はい!
えっと…」
この少女が言うにはここは東の端にある小さな村で港と町の境にあるため、一休みに利用される以外は外から人がくることもないらしい。
「こんなに可愛い女の子がいるのに、もったいないなぁ!」
デレデレとした態度で話を聞いていた兄さん。
ちゃんとこの夏場のアイスみたいな兄さんの頭には少女の説明が理解できたのだろうか。
「あの…あなた達はどこからいらっしゃったんですか?」
どこから…?
「ごめん、よく…覚えてないんだ」
「…は?」
となりにいる兄さんが、なにを言ってるんだと言うような顔で俺を見てる。
目の前の女の子もおなじような顔だ。
「自分の名前、それから兄さんのことは覚えてる。
でも…それ以外は…思い出せないんだ。
でも、逃げてたら、崖に追い詰められて…海に落ちて逃げた。
これだけは覚えてる」
どうして逃げてたのか。
なにから逃げてたのか。
どこから逃げてきたのか。
逃げていた。
それよりも前が面白いくらいに思い出せなかった。
兄さんはいまだに目をぱちぱちしてる。
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