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「本当に…本当に覚えてないのかよ?」
珍しく真面目な顔をしてる兄さん。
そんなに重要なことを、俺は忘れているんだろうか?
そうだとしたら、どうして忘れてるんだろう。
「…まぁ…その話は後にしよう。だいぶ遠くに来たみたいだな…ありがと、お嬢さん」
水が滴ってキラキラしてる淡い金髪に、海を思わせる切れ長の青い瞳。
人懐っこい笑顔で笑う兄さんは、悔しいけどやっぱりイケメンだと思う。
「あの…! よければ、私の家で一泊していきますか?
この村は宿もない小さな村ですが、今後どこかへ向かうのなら一休みも必要です」
聖女のように柔らかい声音でそう言った彼女はとても綺麗で、優しい笑顔を浮かべていた。
そしてその笑顔を見て兄さんは鼻を伸ばし、イケメンなはずの顔がゾンビもびっくりな気持ち悪い顔と化していた。
「でも…迷惑じゃないですか?」
いくら彼女が優しくても、会ったばかりの男を泊めるなんて危なすぎる。
村の子だからそういった方面への警戒が薄いのだろうか。
「はいっ!私、レミィっていいます!
家まで案内しますね!」
「いや~、こんなに可愛い子の家に泊まれるなんて幸せいっぱいだな!」
歩き出したレミィの後を金魚の糞のようについていく兄さん。
あまり兄さんと近すぎるのはなんだか嫌なので、俺はその後ろを少し距離を置いて着いて行った。
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