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「あーあ、またやらかしたな」
目の前の現実にただ呆然としている私に聞き慣れた声が話しかけてきた。
「みやこぉぉぉ…」
「どれどれ?んー、このほろ苦く甘い香り。小麦粉とは別の甘い粉。これは…、シュガーパウダーか」
彼女は辺りをゆっくりとした足取りで周りながら観察し、私がここに至るまでの考察を行う。
その姿はまさに探偵のようだ。
「なるほど。今日はガトーショコラってところでしょうか、綾様?」
私は力なく首を小さく縦に振った。
「あのね、今日は9時からここに来て準備してたの」
「うんうん」
「焼き上がりまでもう少し、…もう少しのところだったのに…」
「いつものように完成品に思いを馳せすぎて焦がしたってわけね」
「…うん」
都は肩を落とす私のそばに来て頭をそっと撫でた。
「ほんと間抜けね」
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