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ありえない。
これは、あたしが生み出した幻?
呆然としているあたしの目の前で、洋は笑った。
「怒ってないんだな? あー、良かったー」
その顔を見て、何かが吹っ切れた。
自然に、笑顔が出てきた。
「もー、しょうがないなぁ。でもホント、遅すぎるよー」
丸二年と二十分の遅刻だ。
「だーかーら、悪かったって言ってんだろ? つーかやっぱ怒ってるだろ?」
「そんなことないってば。ほら、行くよっ!」
「うわっ、ちょっ、美晴? 待てって!」
あたしは半ば強引に洋の手をとって、改札へと走りだした。
当たり前だけど、ちゃんと、洋に触れられた。
それがちょっと嬉しくて、でもなんか、やっぱり変な感覚だった。
ちらっと、友達の顔が脳裏に浮かんだけれど、もう待つ気はなくなっていた。
ごめん、と、申し訳程度に、心の中で謝った。
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