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「それはさ、やっぱり……」  洋は言いよどんで、目線をちょっと泳がせる。それをあたしは見逃さない。  やっぱり、二年前、駅で待ち合わせにするって決めたのは洋だったみたいだ。あたしは、二年前もやっぱり、理由を知らなかったんだろう。  忘れたんじゃないってわかって、ちょっと安心した。 「ね、なんで?」 「う……だ、だからさ……あー、もうっ!」  洋は頭をぐしゃぐしゃと掻きむしってから、突然あたしをまっすぐ見た。 「だって、なんかそっちのがその……デートっぽいだろ!」  一息に言って、ふいっと目をそらす。  でも、耳まで真っ赤にして、恥ずかしがっていた。  それが何だか面白くて、ちょっと嬉しくて、こんな風に言ったら洋は怒るのかもしれないけどやっぱり可愛くて、それに、ちょっとだけ、あたしまで恥ずかしくなった。  何ときめいてんのよ、中学生相手に。  頭の隅の方で、冷静なあたしがわめいている。わめいている時点で、もうあんまり冷静じゃないけど、まあ、中学生にときめいちゃってるあたしよりは冷静だろう。  だって、そんなあたしは、冷静なあたしに、それが?って言い返す。  それが、何? 中学生だから、何?  だって、目の前にいるのは、洋。  中学生だけど、洋。  だから、ときめいたっていいじゃない。  全然理屈の通ってない、中学生みたいな反論だけど、でも、それでいい気がした。  きっと、今此処にいるあたしは、中学生なんだ。  今此処にいるのはきっと、二年前からずっと、ずっと、駅前で洋を待ち続けていた、中学生のあたしなんだ……ぼんやりと、そう思った。  あのときのあたしは、駅前で洋を待ちながら、なんだかデートみたいだなと、ちょっと照れ臭い気持ちでいたことを、ふと思い出した。
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