1/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

 改札まで走ってみたはいいものの、よく考えたら切符を買っていなかった。  バカみたいだねと二人で笑いながら券売機まで戻って切符を買って、二人で電車に乗った。  これから四時間、二人で電車を乗り継いでいく。  そのことが、半分信じられなくて、半分当たり前みたいに思えた。  でも、初めのうちは、どんな会話をしたらいいかわからなくて、ちょっと戸惑った。  二年前、あたしはいったい、洋とどんな話をしながら行くつもりだったんだろう?  全然思い出せなかったけれど、ひょっとしたら、全然考えていなかったのかもしれない。  だって、洋と話すことなんて、いくらでもあったから。  そのとき気になったことを言えば、きっといくらでも話せただろうから。    そう思ったらちょっと気楽になって、けっこう話もできた。  ひょっとしたら、あたしって、二年前とあんまり変わってないのかもしれない。二年前のままの筈の洋と、全然普通に会話できてしまった。  会話が途切れると、お互い窓から景色を眺めたりして、また何かどっちかが言ったら話し始めて、みたいな感じで、時間はゆっくり過ぎていった。  何回会話が途切れた後だったか、ふと気になってあたしは訊いてみた。 「ねぇ、どうして待ち合わせ、駅にしたんだっけ?」 「は?」  洋が訳がわからない、といった声を出す。 「いやさ、だって、家って向かいでしょ? どうしてわざわざ駅で待ち合わせにしたんだっけ?」  二年経ったからか、どうしても理由を思い出せなくなっていた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!