本編

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「ふはははは!我が名はデオ・ドラント、ハデス様に仕えし幹部である!人間よ!おびえろ!竦め!それがハデス様の糧となるのだ!」  ここは平和な街、千大市は宮木野区。 その中にある割と大き目な公園で、一人の少女・・・・・・見た目的に小学四年生くらいの女の子が、叫んでいる。平日の真昼間なので、人も少ない。というかいない。本人としても、「なんで私はこんなことをしているんだろう」ぐらいのテンションなのだが、やれと上司に言われたんだから仕方ない。もうヤケクソである。 「行け!戦闘員!そして悪事の限りを尽くすのだ!」 と、デオ・ドラント(以下、デオ)がガチャポンのカプセルのようなものを勢いよく地面に叩きつけた。 しかし悲しいかな、デオの非力な腕力ではカプセルは壊れない。憤慨したデオが、悪戦苦闘の挙句、カプセルをストンピングで破壊するまで、実に十九分を要した。 「フーッ・・・・・・フーッ・・・・・・い、行けっ!戦闘員っ!そして悪事の限りを尽くすのだぁぁっ!」 ヤケクソ度五割増しのデオが、出てきた戦闘員に命令する。割れたカプセルの中から出てきた戦闘員は、一瞬物凄ぉぉぉぉぉぉく嫌そうな顔をした後、とりあえず手近にあった遊具を壊し始めた。 デオ、既に涙目である。 だが彼女はまだ泣けない。一流の悪は、ヒーローと戦って負けたその時に、初めて泣くことが許されるのだと、その昔幹部になるための講習で聞いているのだ。部下に嫌な顔をされようとも、初任務の場所に人っ子一人いなくとも、泣いてはいけないのだ。ヒーローと戦うその時までは! それに、デオには勝算もあった。自らの子どものような見た目を使い、ヒーローに揺さぶりをかけるのだ。ヒーローが動揺した瞬間、先輩から幹部昇進祝いにと貰った光線銃で、一気に蹴りをつける!という、割と卑怯な作戦である。しかし、悪に卑怯もらっきょもないのだ。全てはヒーローに勝つ。それだけのためなのだ。 「さぁこいヒーロー、来た時が・・・・・・・・・お前の最後だ!」 小さな幹部は高らかに笑う。
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