本編

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時は夕方。デオは、泣いていた。理由は、ヒーローがいまだに来ないから。 遊具を粗方破壊し、近所のおばちゃんに通報されて、警察官も駆けつけて、結構な騒ぎになってから五時間が過ぎようとしているのにもかかわらず、ヒーローは来ないのだ。 デオの理想としては、戦闘員が遊具を壊し始める前に「待てっ!」とか、「止めろっ!」とか何かしら叫びながらヒーローが登場して、それはもう派手なバトルになればいいな。なんて考えていたのである。 だが現実はどうだろう。遊具を破壊し終わり、警察官なんかも気絶させ、人質を取ったのにもかかわらずヒーローは来ない。一種の放置プレイである。見物人も、泣きながらヒーローを待つデオにいたたまれなくなったのか、いなくなった。もう泣き疲れたし、やることもないし、人質返して帰ろうかなぁ、とデオが思い始めた時 「まてー」  来た。ヒーローが。見るからにやる気のなさそうな顔をしながら。ある意味最悪のタイミングで。 「き、来たな!ヒーロー!」  もう家帰ったら何食べようとか考えていたデオは、一瞬誰が来たかわからなかったが、セリフと恐ろしいほど端正な顔つきからヒーローと判断。戦闘態勢を取る。 ちなみに戦闘員は、遊具を破壊した後 「俺、この後合コンあるんで!」  と、足早に去って行った。もうここら辺からデオは泣いている。 「貴様は、この我の容姿に攻撃することが出来るか?できぬだろう!それが貴様の甘さというヒュポォ!?」 五時間前までやる気だった作戦を思い出し、ドヤ顔でヒーローを挑発していたデオだったが、その喉に拳を食らった。絵面的にすこぶる悪い。 「ケホッコホッ・・・・・・な、何をする!オェッ」  もう、この状況の中で悪とか善とかもうどうでもよくなっていたデオは、正義の味方の非道な攻撃にえづきながらも憤慨した。
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