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「あのな?俺は残りの人生を、そりゃあもう緩―く生きて行きたい人間なんだ。それなのにいつの間にかヒーローにされて、この街守れとか言われてんだぞ?もうやってらんないっつーの!」
おおよそヒーローらしからぬ演説を聞かされた少女は
「こ、こんなのヒーローじゃない!」
と、泣きながら走り去っていった。どうやらヒロインではないらしい。
「お、女の子を泣かすなんて最低だ!」
デオ、自分の立場も忘れて激怒。まぁ、立場なんて大分前に忘れているのだけれども。
「いや、こういった年頃の内に現実知っておいたほうがいいんだって。あの子が来ていた制服、そこの中学校のだぞ?中学生にもなってヒーロー信じるってどうよ」
いや、そんなこと言ったらその年でヒーローってどうよ。なんてことをデオは思ったりしたのだが、その考えの先は泥沼しか待っていなさそうなので話題を変えることにした。
「そ、それにしても、私が暴れだしてからここに来るまで随分と時間がかかったじゃないか!我が組織の隠密行動はさすがだな!」
嘘である。むしろ今回の目的は陽動、つまり本命の作戦に近づけさせないためにヒーローをおびき出すことがネックなのだ。それなのにヒーローが来るまでの時間がここまで開いてしまった、ということは、本命の作戦を見抜かれてしまったか、こいつらの情報把握能力が著しく低いだけかの二択。ならば、ここはひとつカマかけておこう。とデオは思ったのだ。
「いや、通報自体は六時間前くらいにあったんだ」
五時間前・・・丁度デオたちが破壊活動をする十分前である。やはり本命を見抜かれてしまったか・・・・・・と気落ちするデオだったが
「だが、その前にラボの博士と将棋をする約束を忘れていてな、その将棋がまた長引いたんだ。飛車角金銀落ちのハンデをくれてやったのはさすがにまずかったな・・・・・・まぁ、そういうことだ」
というヒーローのヒーローらしからぬトンデモ発言に
「・・・・・・組織との対戦を優先しろおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ブチ切れた。当然だろう。約束をすっぽかされて、その内容は将棋。例えるなら、夏場ファミレスで一人冷やしパスタをたのんだら、二時間遅れて四人前のキムチ鍋が出てきたぐらいのブチ切れである。てか、そんなことされたら絶対訴える。
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