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三人、というか二人と一匹は今、森の中を歩いていた。
ナインが言っていた〝マナの樹〟の〝マナ〟とは、どうやら生命(いのち)の源(みなもと)で、マナがなくなると世界が滅ぶらしい。それほど貴重なものなのだろう。
さらに〝マナ〟は、魔術や法術を使う際、必ず消費するらしく、〝マナ〟の消費量を考えながらの魔法の使用は難しいらしい。
〝マナの樹〟というのは、〝マナ〟が集まった大樹のことらしく、世界のどこかにあるのでナインとボスは探しているという。どうして探しているのかは、今聞いているところである。
「今、ホレイスティンはピンチなんだ」
「ピンチ?」
「ああ。このホレイスティンを統(す)べている王政府は、〝マナ〟を使って魔科学の研究をしているらしい」
「まかがく?」
「たしか地球には科学というのがあったな。それに魔術や法術の力を利用するんだ」
ボスが言葉を付け足す。
「花梨、その銃に例えば〝火〟の力を注ぐとする。そしたらおめぇ、それは火が出る銃になるってわけさぁ」
つまり〝風〟の力を使って車が浮いたりできるのであろう。花梨はそう考えることにした。
「問題は……魔科学により作られる兵器だ」
「へ、兵器?」
花梨は少し怖がりながらナインに問い返した。
「ああ。既に一体、何年か前に実験用として出来ていた。その兵器は、人間でも魔法を使えるようになり、とんでもない力を得た」
とんでもない力というのがよくわからないが、普通エルフしか使えない魔法を人間が使えるようになるのだから、それは凄いことなのだろう。
「でも、それってナインみたいなエルフが嫌ってるってだけじゃないの?」
ナインは頭を押さえた。
「魔法を使えるようになった人間は人間ではなくなり、いうことのきかないサイボーグになるんだ」
サイボーグ、つまり人間と機械が合わさった者、改造人間のことである。
いうことのきかない改造人間……たしかにそれはピンチになりそうだ。
「それでナインは〝マナの樹〟を見つけたら何をしようとしていたの?」
「〝マナの樹〟に宿る精霊に、最近復活したサイボーグ『青空02』を壊してほしいんだ」
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