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時刻は既に夜……。
花梨たちは小さな村に到着した。
「今日はここで宿でもとって休もう」
「宿か~、日本っていうか地球とは違うだろうね」
「日本の宿はどんなんでい」
ボスが花梨に尋ねた。
「宿っていうか旅館だね。えと、んー……」
歩きながら考えていたが、どう説明したらいいかわからない。
そのうちにボスが呆れて言った。
「もういいぜい」
話しているうちに、花梨たちは宿の前についた。
「開かないな」
ナインが扉を引っ張ったり押したりしたが開かない。
「おい。誰かいないのか!」
ナインはノックをしながらそう叫んだ。
「夜なんだからそんな大声出さなくても……」
花梨はふと上を見上げた。二階の窓で、耳が尖(とが)っている女性が夜空を見上げていた。
「今日は静かね」
女性は呟(つぶや)いた。
ナインが大声で叫んだというのに、どこが静かなのだろうか。
しばらくその女性を見ていると、女性は花梨のほうに目を向けた。花梨と目があい、女性は微笑んだあと、窓を閉めた。
「綺麗な人……」
花梨は独り言のように呟いていた。
「あぁん?どうしたんでい」
ボスが顔を前足でかきながら花梨に尋ねた。
だが、鍵があく音がして、花梨とボスは扉のほうに目をやる。
扉が開き、先ほど花梨が見た女性が出てきた。
ナインは一歩下がり、女性にはっきりと言った。
「君はハーフエルフだな。なぜこんな所にいる」
花梨は思わずボスにきく。
「なに、ハーフエルフって」
「人間の血とエルフの血を引いてる混血種(こんけつしゅ)でい。人間からもエルフからも嫌われてるんでい」
どうして嫌われているかなど花梨にはわからなかったが、とりあえず野宿するわけにもいかないので、ナインを押しのけ中に入っていく。
「おじゃましまーす」
ハーフエルフの女性は、花梨のほうを驚いたように見ていた。
「ハーフエルフを怖がらないなんて、珍(めず)しいわね」
「もっと怖いのはいるじゃないですか。ラプティとかラプティとかラプティとか」
花梨はラプティしか魔物を知らないので、ラプティの名前を繰り返し言った。
「ふふ、そこのエルフの坊やがいいなら、ここに泊まっていきなさい」
花梨が中に入っているので、ナインは仕方なく中に入り、ボスもナインの後ろから入ってくる。
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