第二話・魚人と法術師

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    時刻は既に夜……。 花梨たちは小さな村に到着した。 「今日はここで宿でもとって休もう」 「宿か~、日本っていうか地球とは違うだろうね」 「日本の宿はどんなんでい」 ボスが花梨に尋ねた。 「宿っていうか旅館だね。えと、んー……」 歩きながら考えていたが、どう説明したらいいかわからない。 そのうちにボスが呆れて言った。 「もういいぜい」 話しているうちに、花梨たちは宿の前についた。 「開かないな」 ナインが扉を引っ張ったり押したりしたが開かない。 「おい。誰かいないのか!」 ナインはノックをしながらそう叫んだ。 「夜なんだからそんな大声出さなくても……」 花梨はふと上を見上げた。二階の窓で、耳が尖(とが)っている女性が夜空を見上げていた。 「今日は静かね」 女性は呟(つぶや)いた。 ナインが大声で叫んだというのに、どこが静かなのだろうか。 しばらくその女性を見ていると、女性は花梨のほうに目を向けた。花梨と目があい、女性は微笑んだあと、窓を閉めた。 「綺麗な人……」 花梨は独り言のように呟いていた。 「あぁん?どうしたんでい」 ボスが顔を前足でかきながら花梨に尋ねた。 だが、鍵があく音がして、花梨とボスは扉のほうに目をやる。 扉が開き、先ほど花梨が見た女性が出てきた。 ナインは一歩下がり、女性にはっきりと言った。 「君はハーフエルフだな。なぜこんな所にいる」 花梨は思わずボスにきく。 「なに、ハーフエルフって」 「人間の血とエルフの血を引いてる混血種(こんけつしゅ)でい。人間からもエルフからも嫌われてるんでい」 どうして嫌われているかなど花梨にはわからなかったが、とりあえず野宿するわけにもいかないので、ナインを押しのけ中に入っていく。 「おじゃましまーす」 ハーフエルフの女性は、花梨のほうを驚いたように見ていた。 「ハーフエルフを怖がらないなんて、珍(めず)しいわね」 「もっと怖いのはいるじゃないですか。ラプティとかラプティとかラプティとか」 花梨はラプティしか魔物を知らないので、ラプティの名前を繰り返し言った。 「ふふ、そこのエルフの坊やがいいなら、ここに泊まっていきなさい」 花梨が中に入っているので、ナインは仕方なく中に入り、ボスもナインの後ろから入ってくる。
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