第二話・魚人と法術師

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「まあいい。花梨、事情は聞いた。まったく勝手なことを……」 「いいでしょ。ほら、行くわよ」 ネレーデが花梨たちを呼び止めた。 「あなたたち、魚人がどこにいるか知ってるの?」 「さあ?」 「まったく大変ね、ナイン」 「もう慣れた」 「ふふ、そう。じゃ、わたしが近くまで案内するわ」 「任せたでい」 花梨たちはネレーデに、村の近くにある川まで案内された。 「ここよ。じゃあね」 ネレーデは足早に去っていく。 「ここって、どこ?」 花梨は不思議そうに川を見つめる。 「ここだ」 「ここだな」 ナインとボスが頷く。 「いいか花梨。魚人は水中に住んでいるんだ。だから、ここだ」 ナインは川を指差した。 「は?え、潜るの?」 「違う。この川の上流まで泳ぐんだ」 ナインがそう言った瞬間、川から何者かが現れた。 「え?」 その人物の肌は青く、体も人のそれとは違うことが花梨にもわかった。 「魚人?」 「そうだ」 魚人は花梨たちを見回した。 「なんだお前らは」 「僕はナイン。見てのとおりエルフだ。お前を倒す」 魚人はふっと笑い、花梨に近づいた。 「おう、花梨に何の用でい」 ボスが魚人の前に立ちはだかる。 「いや、エルフと一緒にいる人間が珍しくてな」 花梨は銃を構え、ボタンを押した。光が銃口に集まる。 「花梨、ボタンを離せばマナが放たれる。やれ!」 ナインが花梨を促(うなが)す。 「ボス!避けて!」 花梨が叫ぶと、ボスは横に移動した。 「ん?」 花梨はボタンから指を放す。 「なんだ!」 マナが、魚人に向かって放たれた。 「やったの?」 魚人は血を吐き、その場に倒れた。 「さて、残りはあと四人だ。こいつよりは強いだろう」 ナインが川に飛び込み、ボスもあとに続く。 「濡れたくないけど、しょうがないよね」 花梨も川に飛び込んだ。 ばしゃんと水しぶきが上がる。 「あれ、意外に浅い」 川の深さは、花梨の下半身が隠れる程度だった。流れも緩(ゆる)やかなので、流される心配はない。 「行くぞ」 花梨とボスはナインの言葉とともに、川の上流を目指すことにした。
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