第零話

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「行きたくなんか、なかった……」 地球歴二千八年、日本、初夏……。 お母さんはよく言っていた。 「人はね、一人じゃ生きていけないの」 私、それは違うと思った。一人でも生きていけると思っていた。 生まれてから十四年、私は普通に暮らし、普通に生活してきた。 今日も学校が終わり、家に帰って部屋のベッドに横になる。 「はあ、今日も告白、出来なかったな……」 私には好きな人がいた。中学校の入学式のとき、一目惚れした。 「明日、学校休も……」 居間でお母さんが呼んでいる。 「帰ったらただいまぐらい言いなさい。ねえ、聞いてるの?下りてきなさい!」 私はその言葉を無視して、眠りについた……。 「起きろ」 目を覚ますと、金髪の少年が目の前にいた。 「……タイプだわ。なんていい夢なの……」 私は少年の唇を奪おうとした。夢だと思ったのだから、しょうがない。 「や、やめろ!」 少年は拒み、私を押しやった。 私はまた、眠りについた。 「う~ん……」 目を覚まし、伸びをする。 「よく寝たー!」 あれ?ここはどこ? 起きたところは、私の部屋ではなく、見慣れない部屋だった。日本だとまずありえない。 ベッドから出て、窓の外を覗く。 「森……?なんで?夢?」 すると、先ほど夢に出てきた金髪の少年が部屋に入ってきた。 「あ、まだ夢か」 私はぽんっと手を叩く。 少年は机にサラダとスープ、それとコーヒーを置いた。 「夢じゃない。ほら、これでも食べろ」 少年をよく見ると、何かが違う……。 「あ」 少年の耳は、尖(とが)っていた。 「その耳、なに?」 少年はベッドに座った。 「エルフを知らないのか?」 エルフ?エルフ?ああ、ファンタジーなんかによくいる……。 「ああ、コスプレ?」 少年は、何だそれはというような表情をして、言った。 「なんだコスプレって」 ああ、今どきコスプレ知らない人がいたんだ。それともお金がなくて情報が集められないのかな? 私は少年の横に立って、耳に触れる。 「コスプレっていうのは、こういうのを……あれ?取れない」 耳を取ろうとしたが、取れない。 「痛いからやめろっ!よくわからんがこの耳は本物だ!」 「えぇぇぇ!?」
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