第二話・魚人と法術師

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ボスはナインの声が聞こえ、魚人から離れる。 火の玉が三つ、魚人に飛んでいく。ナインが唱えた〝フレイムドライブ〟という呪文である。 「シャハハ!こんなもの痛くも痒(かゆ)くもない!」 ボスは再び魚人に飛びかかろうとした。だが……、巨大な光が魚人を襲い、魚人は倒れた。 「く……そ……」 花梨が目を覚まし、魚人を撃ったのである。 ボスは、花梨とナインを部屋の中央に連れてきた。 「二人とも、大丈夫でい?」 だが、花梨とナインは気を失っていた。 「まったく……よし、おれぁ上に行ってくるからよ、目が覚めたら来いよ」 ボスは二人を残し、上を目指す。 ボスが上に着(つ)くと、魚人ではない人々がたくさんいた。 「おめぇら、魚人に拐(さら)われたヤツらでい?」 人々がゆっくりボスに近づき、ボスに尋ねた。 「き、君は……私たちを助けに来てくれたのかい?」 ボスは笑って頷(うなず)いた。 「そうでい。ところでよ、ここにネレーデっつう女の妹はいねぇかい?」 ボスが尋ねると、ハーフエルフの少女がボスの前にやってきた。 「ネレーデ姉さんの妹はわたしです。姉さんに何かあったんですか?」 「いやいや何もねぇけどよ。あ、おれぁボスってもんでな、ネレーデに世話になったんだ」 「姉さんに、ですか?」 「ああ。お、ネレーデが法術師ならあんたもそうだろ?下に仲間がいるんでい、傷を治してくれねぇかい?」 「は、はい」 ネレーデの妹は走って下に下りていった。 「あと一人魚人が残ってるんだがよ、知らねぇよな」 人々は首を振る。 「そうかい。じゃあと一人を倒したらまた来るからよ、少しここで待っててくれよ」 ネレーデの妹は〝ファーストエイド〟の呪文を唱えて、花梨とナインの傷を治していた。 「レレツ・ナイデ・マジーデ」 二人の傷が消えていく。 「ふ、ふう」 花梨が目を覚ました。 「ん……」 ネレーデの妹はびくっと震え、花梨から離れた。 「あ、と……。誰?あ」 花梨の前にいた少女は、耳が尖(とが)っていて、どことなくネレーデに似ていた。 「ネレーデさんの妹?」 ネレーデの妹は、震えながら答えた。 「は、はい。フィーナといいます」
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