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それが妙児の目的であった為、都季の成長の早さは妙児にとって嬉しい誤算であった。
都季は五日を過ぎた頃から「書物を読んでみたい」と言い出し、簡単なものではあったが難儀しながらも二日でそれを読了したのである。
下女の中には、「何故あの子だけ特別な仕事なのよ」と呟く者もいたが、これが都季を上級女に育てるためのものであることは誰にも気付かれなかった。
全て順調であった。
しかし、ある日、都季は大きな失敗をおかしたのである。
***
半月の日が流れていた。
清々しい朝だった。
部屋付きは、娼家の柱や廊下を念入りに水拭きしている。
「秋月(しゅうげつ)様ですか」
都季は予約文を受けとるなり、それを持ってきた下男に訊いた。
「へ?」
無精髭が目立ち始めた三十過ぎの下男は、都季が文を開く前から娼妓名を言い当てたことに、少し驚いた顔をした。
「ハハ、顔を覚えてくれたのか。
俺が来たのはまだ三回目だってのに賢い子だな」
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