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「美味でごじゃった」
「また来たいね」
「やっぱり、甘い物は普通に限るね」
「豪華な装飾なんて、もう見たくもないですわ」
「苦労してるんですね……」
「私達、階級とかそこまで高くなくて良かったー」
「僕達、貴族だけど大分楽に過ごしてきたからね~」
「平民の俺が居ても、誰も指摘しなかったからな」
八人というグループでは多めな人数で大通りを練り歩く。
ちなみに、カイリ達の会話でエルバート家が中流貴族なのを思い出した。
皆も覚えてるかな? 多分忘れてる人が多いだろうなー。
「……ん?」
「あれ、念話だ」
念話の気配がしたので、応答してみる。
どうやらアッシュ以外の全員に来ているようで、アッシュは暇そうにしている。
《突然で済まないが……。『五王星』、至急ギルドまで来て欲しい。緊急事態だ》
《緊急事態? 『五王星』を呼び出すって、どれだけの事が?》
《……脱獄だよ。それも、『特級魔罪者』達が、ね》
《はぁ!?》
有り得ない単語を耳にして、思わず叫ぶ。勿論念話で。
『特級魔罪者』とは、『特級魔法犯罪者』を略した物で、言葉の意味は大体理解できると思う。
言わずもがな、魔法で罪を犯した人間の中でも、一番重い処罰が下される奴らの総称だ。
そして、この国の『特級魔罪者』は、今のところ一組しかいない。
……元・勇者兼聖帝と、闇を除いた七大貴族の跡取りの六人。
《……分かりました。詳しい話はそちらで聞きます。他には?》
《【帝の導き】も協力するよ。先ずは簡単な情報を伝えて、その後に合同会議だよ》
《了解!》
念話を切って、周りを見る。
『五王星』の残り四人は真剣な面持ちで頷き、『闇帝』のイリナもそれに倣う。
「……リリエル、どうしたんだい?」
「お父様が、緊急事態の為城に戻るようにと。アッシュ、貴方も来て下さいな」
「レンゲ達は……、どうやら、同じ理由で召集かい?」
「だな。また向こうで会おう」
その言葉を境に、俺っち達は【転移】を使ってそれぞれの場所へと向かった。
――この一報が、この国だけではない。世界中をも巻き込む、一つの大きな事件の幕開けだった――
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