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「って、『闘争瞬域』さん、この中にいるの~? 迷ってない?」
「平気やす。あいつにゃ心強い仲間がいらっしゃるんで」
「しかし、どうしましょうか。私たちの手伝いは不要でしょうか?」
「うーん、そうでやすねぇ~……」
ずれた麦藁帽子を直しながら、フォデマが答える。
ギュオオオオオオオオオ!!!
「ひゃっ、何~?」
「…み、ミノタウロスですよね、あれ?」
「ほぅ、この森の中で良く生き残れやしたね」
三人の前に姿を現したのは、巨大な斧を肩に担ぐ牛の様な魔物。
ミノタウロスは、雷を少しだけ操る事が出来る。
そして、持ち前の剛腕怪力。よってSSランクとされている、強力な存在。
「あ、アイリさん。どうすればよいですか?」
「んー、そうだね~…」
「ご両人は待ってて下せぇ。先の戦いでお疲れやしょうから」
フォデマが二人に、下がる様にジェスチャーをする。
「さて、ではご両人にわっち、『天然』の実力を見せやしょう」
ギュオオオ!
ミノタウロスの斧が降り上げられ、フォデマへと振り下ろそうとされる。
――が。
「ま、この程度なら一瞬でさぁ」
『突然生えた鋭い木』に、ミノタウロスは下から脳天まで、一瞬にして串刺しにされた。
「わっちの得意な属性は木。こればっかりは誰にも負けん自信がありやしゃあ」
またずれた麦藁帽の先を持ち上げ、にやりと笑う。
子供の様な格好に似つかぬ、恐怖を与える様な笑みだった。
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