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笑うのを止めた。
笑えば、気持ち悪いと、気味が悪いと叩かれるから。
泣くのも止めた。
泣けば、五月蠅いと、煩わしいと殴られるから。
怒るのも止めた。
怒れば、もっと怒られものを投げつけられるから。
本に書いてあったことは一通りやってみた。
その度に気色悪いと、静かにしろと、怒鳴られ殴られた。
そうしていくうちに、表情の作り方を忘れた。
そうしたら余計に気持ち悪いと言われた。
喋ることを止めた。
喋れば、ご飯が食べられなくなるから。
音を発することを止めた。
音を発すれば、飲み物が飲めなくなるから。
そうしていくうちに、声の出し方を音の発し方を忘れた。
そうしたら余計に痛いことをされるようになった。
遂には存在も疎まれるようになった。
だから、出来るだけ存在を薄く。誰にも気付かれないように。
出来るだけ隅っこで動かないように。
出来るだけ、人の皆の邪魔にならないように。
一度だけ。たった一度だけ、私が幼い頃母が買ってくれたぬいぐるみを抱いて、じっとしている。
そうすれば、誰も私を叱らない。
そうすれば、誰も私に痛いことをしない。
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