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「僕は何の迷いもなく答えた。人が好きだから、と。だけど、それがいけなかったらしい。神は言ったんだ」
――神は、天使は。天界は平等でなければならない。人の為に働くのではない、平等を保つために働くのだ。
「そして、神は僕に″雷″を渡した。これで、増え過ぎた人間を間引くのだ。さすれば次の神はお前だ……と言って」
嫌だった。この手で人を殺せなどという命令には従いたくない。でも、神の言うことは天使にとって絶対だ。逆らうことは許されない。
「神は呆れた。そして、雷を僕から取り上げると、躊躇わずに地上に投げたんだ」
まるで、これが正しいのだと言わんばかりに。お前もやるのだと神の眼は語っていた。気がついた時には、僕は飛び出していた。
「……僕は馬鹿だ。天使が雷……いや、″神鳴″を受け止めるなんて出来る訳がない。でも、そうしなければ、僕は壊れてしまいそうだった」
自分の不手際で、人が傷付くのは嫌だった。恐怖に近い、それよりも暗い感情が僕を支配していた。失うのは嫌だ。自分が愛した者達を。
「……その後は、フィアも知っての通りさ。僕は結局、守りきれなかった。自分が引き起こしたことさえ」
「……馬鹿です、天使様は」
フィアは掠れるような声で言った。
そうだろうな。絶望してくれ、僕に。結局何も出来ない、この僕に。
「本当に、お馬鹿様です。例え、どんな理由でも……貴方様が、村を、私達を救ってくれたのには変わりありません」
「何を……?」
――フィアが、僕の腰に手を回していた。
「天使様は、希望をくれました」
「僕は何も――」
「天使様が、存在してるってこと。それが、私達の救いになるのです。ああ、本当に天使様は居るんだ……と」
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