堕天――fall in down――

1/5
前へ
/13ページ
次へ

堕天――fall in down――

 寒い。体が震える。加護がないことがここまで辛いとは思わなかった。  樹木立ち並ぶ森の中、枝の隙間から落ちた雪に足跡が残されていく。 「……駄目だ、僕は人々の元へ行かなければ――」  意志とは裏腹に、徐々に足取りは重くなっていく。季節には似合わない、ノースリーブの上衣には既に、主を守る機能なんてものは無く、吹雪が直接素肌を刺す。 「朽ちる訳、には……」  体は既に、限界だった。遠のく意識、眼前に近づくは白い地面。  ――クルルッ、と。  何かの鳴き声を聞いた気がした。だが、既に視界は朧げに成りつつあり。  白き獣と、地平を点々と続く淡い光。それが意識の終わりに見た景色だった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加