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堕天――fall in down――
寒い。体が震える。加護がないことがここまで辛いとは思わなかった。
樹木立ち並ぶ森の中、枝の隙間から落ちた雪に足跡が残されていく。
「……駄目だ、僕は人々の元へ行かなければ――」
意志とは裏腹に、徐々に足取りは重くなっていく。季節には似合わない、ノースリーブの上衣には既に、主を守る機能なんてものは無く、吹雪が直接素肌を刺す。
「朽ちる訳、には……」
体は既に、限界だった。遠のく意識、眼前に近づくは白い地面。
――クルルッ、と。
何かの鳴き声を聞いた気がした。だが、既に視界は朧げに成りつつあり。
白き獣と、地平を点々と続く淡い光。それが意識の終わりに見た景色だった。
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