深くて長い夢のおはなし

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 まだ小さい少女にはとても追いつけないような速さで動く花輪は少しずつ崩れながら、後を追う少女を海へと誘う。他の子供たちがそれに気付いて慌てていると、一人の少年が駆け出した。  少女が花輪に追いついたときにはもう花輪の形ではなく、それを手につかみ泣きそうな顔をした少女はゆっくりと傾く。子供たちの悲鳴が響いた。  幼いまんまるとした瞳が見開いていき、少女は慌てて花を放してすがるように手をのばす。  駆けつけた少年はその手をしっかり握って思い切り引いた。二人は黄色い花畑に倒れこむ。視界いっぱいに青空が映った。その瞬間、子供たちの悲鳴に驚いたのか、岩で休んでいたであろう白い鳥がばさばさと海の向こうへ羽ばたいた。  二人は草原に倒れたまま、ゆっくりとお互いを見つめあって明るく笑う。二人のまわりに他の子供たちも集まって、無邪気な笑い声が丘いっぱいに響き渡る。  一面の青が寂しく揺れる。  明るい笑い声が響く丘の下には、一本の黄色い花が、穏やかな波に乗って揺れていた。 ■おわり■
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