深くて長い夢のおはなし

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 一面の青が寂しく揺れる。 一部を白く染めながら、岩場に当たって砕け散った。  季節は冬の終わり。 波が奏でる涼しい音を楽しむには、まだ風が少し肌寒い。優しく照らす日光をまぶしく反射しながら、波は大きな崖をかけ上る。背の高い崖の上にたどり着ける波はなく、白く舞って海へと帰った。  少女は崖の上に立っていた。 白いワンピースに身を包んでいる。風に揺れる茶色の髪をそっとおさえて、閉じていた目を小さく開く。  少女はひとりぼっちだった。  緑が美しい小高い丘の、赤屋根の風車のある家で。  流れるような優しい風が、丘一面に咲く黄色い花をふわふわと揺らした。同調するように少女のきれいな茶髪も真っ青な空になびく。白いワンピースからのぞいた華奢な腕が、日の光に当たって透き通るように光った。  少女の視線の先にあるのは広い海で、下からは波が岩に当たってひいていく、涼しい音が聞こえてくる。
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