深くて長い夢のおはなし

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‐‐‐  一面の青が寂しく揺れる。  波同士がぶつかった小さな水音が青い空の下で流れている。今日の海はひどく静かで、いつもは崖にぶつかり騒ぐ波も、不思議なぐらいに大人しかった。その海の隣には険しい崖があり、鋭い岩がところどころ海から突き出している。  波が打ち寄せるその岩の先では、白い鳥が羽を休めて風に当たっている姿を見ることができた。その崖の上には広い丘があり、大きな風車がついた家の集落がある。  緑が綺麗なその丘には、春になると一面に黄色い花が咲く。するとその集落に住む小さな子供たちが、家で飼っている動物を引き連れて丘へ出てくる。動物の中には山羊や牛などの家畜もおり、彼らが草を食べている間暇になる子供たちは黄色い花を手に取り編んでいくのだ。  すると丘から海へ押し出すような強い風が吹いて、一人の少女の小さな手から、作りかけの花輪が逃げ出した。花輪は風にさらわれて、時おり地面を転がりながらも速さを落とさず飛んでいく。
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