-4-

10/10
前へ
/40ページ
次へ
『あ、宮園くん』  亜優が宮園に向けた、……あの頃よりずっと大人びた、俺の知らない笑顔。     あいつも俺と同じ気持ちでいると思い込んでたけど、……考えてみたらそんな保証はどこにもないんじゃないか。    もしも亜優が、すでに今より少しだけ先の世界を見ていたとしたら。  もしも亜優が、――俺の気づかないところで、他の誰かに惹かれていたとしたら。  自分ひとりがこの場に立ち止まり、亜優の背中を見送っている画が浮かび、急に心細くてたまらなくなった。  いつまでも子供のつもりでいたのは、――もしかしたら、俺だけだったのかもしれない。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1110人が本棚に入れています
本棚に追加