25人が本棚に入れています
本棚に追加
「ハッハッ・・・ハッ」
夜空に浮かぶ月が辺りを青白く照らす中、一つの影が木々の間をすり抜けて行く。
その様子は酷く焦ったもので、見れば体の至る所には鋭利な刃物の様なものでつけられた傷跡があった。
当たり前の事ながらその傷跡より血は流れている、普通ならば傷を癒すため大人しく身を隠しているべきなのだが、傷を負ったその影は出来なかった。
「ハッハッ…クソッ!アノヨウナモノガイルトハ!」
そう言い放ち影は木々の開かれた広場に辿り着いた。
月明かりに照らされたその体躯は、犬そのものであるが、その顎(あぎと)より見えるその牙は通常の犬が持つそれよりも遥かに大きく、一噛みで普通の人間ならば致命傷を与えるには充分なものであった。
最初のコメントを投稿しよう!