忘れる

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そうそう、あれは去年の今頃だった。 家族といるのが、面倒になって自転車で畑や田んぼ、ビニールハウスしかないような近所を走り回っていた。 「っさむ。」 そりゃ、寒いはずだ。 まだ一月に入ったばかりの冬。 これから雪が降る可能性もある。 「はぁ~~~。」 そんなことを考えながら、深いため息をつく。 「お、ついた。」 小学校への通学路を通り、毎日徒歩三十分はかかる道を自転車で十分。 「もう、卒業かぁー。」 少し感傷に浸り、踵を返す。 帰りは、通学路なんて無視してただ家に向かう。 「綺麗。」 雪をかぶった富士山は一枚の絵のようで。 ふと、空に向いていた視線を前へと向ける。 その先には、見慣れた風景と犬の散歩をするおじいさん。 写真に収めたい景色。 携帯やデジカメなんて便利品を持っているはずもなく。 「ふぅ。」 また短くため息をつく。 けど、携帯とかを持っていたって、収めることなんてできなかったんだよ。
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