忘れる

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犬とおじいさんは二つ田んぼを挟んだ先にいて。 田んぼの周りはすべて道。 そこの中の一つの道をパッと選んで通ることにした。 一つ一つの田んぼがとても広いからおじいさんたちもよく見えていなかったのだと、近づくにつれて思わずにはいられなかった。 「なにあれ。」 霜柱はあるはずの田んぼの中を悠々と歩いている。 さらに近づけば、透けていることがわかった。 「そっか。」 でも、俺は悲しむこともその一人と一匹に対する感情が芽生えることもなく。 目をそらす。その事実から目を瞑り自分のことばかりを優先する。 「気づけたらいいね。」 同じことを繰り返す苦痛から逃れるように。静かに祈るだけ。 矛盾なんて知らん。
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