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「何してんの?
早く入れば?」
土曜日の午後5時。
ウソツキさんの部屋の玄関。
「うん……」
私は少しためらいながら、中へ一歩足を進める。
昌さんに会った次の日の夜、ウソツキさんから電話があった。
土曜日、昼過ぎで仕事が終わるから、夕飯を一緒に食べようって電話。
なんでこんなタイミングで、と思った。
もしかしたら昌さんに何か聞いたのかな、とも。
でも、複雑な気持ちを抱えながらも、やっぱり会えるのは嬉しくて、ちょっとだけメイクをしてスカートもはいてここまで来た。
「お邪魔します」
部屋に入ると、ニャァ……とイトちゃんが私の足に体を擦り寄せて鳴く。
ドアのところで立ったまま所在無くモジモジしていると、先にソファとテーブルの間に座ったウソツキさんが、
「何?立ち話でもしたいわけ?」
って聞いてくる。
「や、違うけど……」
「じゃあ、ここ」
そう言って、ウソツキさんは自分の隣に敷いたクッションをポンポンと叩く。
いつもの私の定位置だ。
ニャア、と一声、2人の間に響く。
「あ」
行こうとすると、先にイトちゃんがその場所にトトトッと走り、ちょこんとクッションの上でお座り。
「ぶは。
イトちゃんに盗られてやんの、俺の隣」
イトちゃんはウソツキさんに撫でられ、目を線にしながらゴロゴロと喉を鳴らす。
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