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「ねぇ、猫相手にそんな険しい顔しないでくれる?」 尚も突っ立ったままの私はハッとする。 一瞬、この光景が私の不安を投影しているかのように思えて、ボーッとしてしまった。 「ほら、イトちゃんは俺の膝に乗せたから。 あ、ネコが俺の上に乗ってもいいけど」 「いい」 「早いね、切り返し」 ……うん、大丈夫だ。いつもどおり。 ウソツキさんのからかい半分の笑顔を見て、自分に言い聞かせる。 ゆっくりクッションに腰を下ろし、スカートを下から押さえて体育座りをする。 最近車の運転席と助手席で話をすることが多かったから、この肩が触れる距離は若干緊張。 テーブルに置かれた、コップ二つにいつものチョコを見ながら、なかなか真横のウソツキさんを直視できないでいる。 「何ソワソワしてんの?アナタ」 「し、してないし」 横にいるウソツキさんが、ぐりんって顔を覗き込む。 「口、テカテカしてる。 グロスか何か塗ってきた?」 「た、たまには、いいかな、って思って」 背伸びをしているのは、少しでもウソツキさんに見合うような大人に見られたいから。 昌さんに対抗意識を持っているわけではないと、自分で自分に言い聞かせる。 「俺ね、キライ、それ。 キスの時ベタベタするから」 肩を抱かれ、おでことおでこをコツリと当てて、不敵に笑うウソツキさん。 イトちゃんは傾いたウソツキさんの膝の上が窮屈になったのか、ふいっと降りてテーブルの下で毛繕いを始めた。
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