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「ウソツキさんっ」
屋上のドアが開く音が聞こえ、スーツ姿のウソツキさんがこちらへ向かってきた。
先程の電話で、もう近くだから5分で着く、と言ったウソツキさん。
本当に5分経ったか経たないかで、屋上まで上がってきた。
ベンチから小走りで走り寄った私に、ウソツキさんは、
「大丈夫。
ネコの説明からして、多分、過呼吸だと思うから。
昌は心臓のこともあるし、素人判断じゃ怖いから、とりあえず救急車も呼んだし」
と言って、私を落ち着かせるように肩にポンと触れ、ベンチへ走った。
「昌っ」
横を過ぎていったウソツキさんを、私はゆっくりと目で追う。
風がサラサラと私の髪を揺らし、何故だか、その一瞬がスローモーションのように感じた。
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