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未来に価値を見いだせないような、切なげで無気力な目をした女の子。
その目に、希望や明るさや熱を彩色したのは自分だと、いい気になっていた。
彼女にとって自分は文字通り唯一無二なんだと、胡坐をかいていた。
そんな自惚れと甘えと欲が、ネコを追い詰めた。
屋上だったそこは、いつのまにかどこかの薄暗い場所に変わっていて。
怯えからか拒否からか、俺が伸ばした手に、首を横に振って涙を溜めながら後ずさりするネコの姿。
届かない。
触れられない。
あぁ……。そうか。
……俺は。
全く逆の意味での、唯一無二に、なったんだ。
「……」
自室の天井が、目を覚ました俺を迎える。
最後に見たネコの表情が頭から離れない。
夢の続きを見たいとも思えずに、起床にはまだ早い明け方にも関わらず、俺は体を起こした。
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