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「まったく、遼平は晃樹のことが大好きなくせに、友情の使い方を間違ってるのよ。
私が説得しても、てんで聞かないんだから。
……っと、ごめん、お兄ちゃんの悪口言っちゃって」
沙織さんが舌を出してそう言ったので、私は頭を横にブンブンと振った。
「あ、でもね。
もう一度言っておくけど、あの人にとって、妹の美亜ちゃんが第一だから、あなたを傷つけたくなかったから、っていうのが最優先だよ?
もし本当に晃樹と昌のよりが戻ったとして、美亜ちゃんを泣かせたくなかったんだと思う。
まぁ、美亜ちゃんの蕁麻疹のことがあってからは、それどころじゃなくて、その原因を遠ざけたかった、っていう理由に尽きると思うんだけど」
「はい」
今の私なら、あの時の『でも』の続きも、なんとなく分かる気がする。
『美亜が俺の気持ちをちゃんと理解するのはいつだろうな』
頭に響くお兄ちゃんの言葉。
たまに過ぎることもあるけれど、お兄ちゃんはいつも、私を守ろうとしてくれているんだ。
お父さんに上げられた手から、いつも私を隠して覆ってくれていたみたいに。
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