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「すっごい嫌な上司がいたとか、仕事内容が予想以上にハードだとか」
「そんなの予想の範疇内だよ。
大丈夫、ネコに心配してもらうようなことは無いから」
そう言ってふわりと笑ったウソツキさんは、少し倒れている体勢から左手を伸ばし、助手席に座る私の髪をゆっくりすくった。
私は、なんとなくしっくりこない気持ちを抱えたまま、ウソツキさんを見る。
ギ……、とウソツキさんが体を起こす音が聞こえ、そのまま優しいキスをされた。
「お母さんが心配するだろうから、そろそろ帰るね」
唇を離すと、頭をよしよしされ、そう言われる。
「うん……」
もっと、と思う自分を抑えて返事をし、家の前まで送ってもらい、ウソツキさんの車を見送った。
「あ、……雨だ」
アパートの2階へ続く階段の途中、頬にポツ……、と雨の滴が落ちてきた。
家の中に入ると、雨は本降りになった。
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