1、幸せらしい幸せ

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さざめく波が碧く、 雲を流す風を覆う空が蒼い。 気持ちがいいくらいに快晴だ。 こんな日は浜辺にでも寝そべって、風導に身を任せたい。 そんなことを思案しながら、青年―…ウィリスは、テーブルを綺麗に且つ素早く拭くと、窓から目をそらし、開店準備を手伝う。 「なーんてな」 椅子をきっちりと四方に配置し、テーブルの準備はOK。 指差し確認という、慎重な確認方法を行い、ウィリスは自分らしくない考えを鼻で笑った。 「どーしたー?」 店へ納品された食資材を運びがてら、店長である男性がウィリスのそんな様子を見かけたらしい。 珍しい事なので、普段から真面目に仕事に取り組んでくれるウィリスであったが、思わず問い掛けてしまった。 「なんでもないっす。 あ、準備OKですよ」 「ん、そ、そうか」 ウィリス・ハーバー 無造作な茶髪、気だるそうな態度が目立つが根は優しく、なんだかんだ言って生真面目。 今年で18歳。 ひたすらにバイトに勤しんでおり、そんな最中でも独学で医学を学んでいるらしい。 将来の夢は医者。 「疲れたんだろ…? 頑張りすぎるなよ」 店長は抱えていた木箱を床に置くと、徐にウィリスの肩に手を乗せ、涙ぐましい彼の生活を嘆くように… 「誰の生活が涙ぐましいんだっつの」 描写と呼んでよいのか分からない稚拙な文章にウィリスは突っ込みを入れると、一つため息をついて、肩に乗せられた手に紙を器用に渡す。 「お?」 「資材とかの必要数、纏めときましたんで、発注に役立ててくれたらと思って」 気が回るし真面目。 バイトの掛け持ちしまくりな点を除けば、正式に雇いたいと思う店長は、残念そうに遺憾を抱くが、その思いを表に出すことはなかった。 そのまま、ウィリスから手渡された紙を受け取り、感謝を述べる。 肩から手を離すと、ウィリスは手に持っていた台吹き用のクロスを丁寧に折り畳み、バーカウンターの下部へと仕舞いに向かう。 「店長」 「おー?」 「俺、このまま買い出しに行ってきます」 店長を背にバーカウンターへと歩みながら、ウィリスは店長へと伝える。 「あいよー、気を付けてなー」
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