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お店が忙しくなるだろうという理解はあるし、お金が欲しい。
だが目前の幼馴染みは爛々と目を輝かせ、自分と共に祭りを堪能する未来を予見している。
ため息をこぼし、ウィリスは空を見上げ店長に心からの謝罪を心の中で述べる。
「…わかったわかった。
取り敢えずいまバイト中だからよ、
お昼過ぎにどっかで集合、それでいいか?」
あきらかに気だるげな雰囲気を醸し、めんどくさそーな口ぶりで適当に提案。
約束したことを覚えていないにしてもちょっと雑過ぎではなかろうか。
「うん!
あ、じゃあ大噴水広場で集合ね!」
まあ当の本人がそんなことを気にしてないご様子なので分かっていての対処なのだろう。
幼馴染みとは便利なものだ。
ちゃっかり集合場所を告げて意気揚々とスキップで元来た道を駆け戻るアリシア。
「おう…
あ、お小遣いは少なめになー」
そんなアリシアの華奢な背に呼び掛ける。
お金に厳しいオカンの一言を。
――
――――
やがて買い出しを終え、ウィリスはバイトに戻る。
しかし忙しい…といっても普段の流れに毛が生えた程度。
注文をとって、厨房にオーダーを通し、出来上がった料理を手早く正確に運び、ぬかりなく清掃を手短にし、次のお客様をお通しする。
少し余裕がある。
これならシフト通りに抜けさせてもらえるかもしれないな。
ウィリスはせわしなく動かす四肢を主体としていながら頭の片隅ではそんなことを思い浮かべていた。
ふと、
あるものが目に止まった。
パブといえば、様々な冒険者や暇を持て余した兵士などが主な客。
今日も勿論、当たり前ではあるが市民。冒険者。兵士など、見る限りはいつもの光景だ。
見間違いだろうか。
がはは、と笑うとある兵士のマントの中の甲冑に違和感を覚えさせる紋様が存在したのは。
やがて、シフトアップ。
朝番なので手早く上がって本来ならば勉強でもしようかと予定していたシフトの希望であったが、この後はご存知、振り回されなければならない。
店長が、一段落し一旦カウンターに戻るウィリスに゛上がっていいよ゛と告げた。
「お疲れっす、ウィリス」
「お、大丈夫すか?」
「この後はアリシアちゃんと でぇと なんだろ?」
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