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なのに、それでも彼は自分の夢を追った。
結局ふたりは別々の道を歩むことにした。
そんな彼と別れて、もう五年になる。
頼子はまだ誰とも結婚をしていない。
会社には色目を使ってくる男もいるが、三十過ぎた女だから簡単に口説けるだろうと勘違いした下心丸出しの男ばかりだ。
結婚を望まないわけではないが、そんな男には興味がなかった。
雨はまだやまない。
あの時、彼と別れなければ今とは何か違っていただろうか……。
別れたことを後悔しているわけではない。
だが後悔していないわけでもない。
そんな気がする。
そのへんは自分でもよくわからなかった。
ただ傘をさして待っている彼が、今はもういない。
そのことは少しだけ、さびしく感じた。
雨はまだやまない。
了。
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