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そんな夢物語に目を輝かせる大学の友人を見て、自分はどこか冷めた目で見ていたことも憶えている。
でもその帰り道、雨が降ってきた。
友人はまだ彼らについて行くというので先に帰る事にしたのだが、かなり強い雨に頼子は立ち尽くした。
しばらく待ったが雨足は弱まらない。
仕方なくタクシーで帰ろうと思った、その時。
コンビニで傘を買って来たらしい敏之が後ろから走ってきた。
敏之は買った傘を大事そうに腕に抱えていて、土砂降りの中を走って来たのだった。
当然彼はびしょ濡れだった。
そしてその傘を頼子に差し出してくれた。
濡れると風邪をひくから。この傘で途中まで一緒に帰ろう。
彼はそう言った。
頼子は傘もささずに追いかけて来た彼が滑稽(こっけい)に思えた。
あんたもうびしょ濡れじゃん。
そう言うと彼は、自分が濡れている事に今気づいたように笑った。
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