第1話

5/12
前へ
/12ページ
次へ
「なんだよ!! かっこつけちゃってさ」 「全部話せよ!! あ、なんかネタ見せろって!!」 そうだそうだ、と周りが騒ぎだす。 「ごめん、俺、コンビだからさ。 一人だと何もできないんだよね……」 「なんだよ、つまんねーなぁ。 相方がいねーと何もできないのかよ」 カチンときた。 ネタを書いているのは俺だし、構想を練って動きを考えたりするのも俺だ。 それでも、ぐっとこらえる。 ここでブちぎれて週刊誌にでも載ったらそれこそ面倒くさい。 「まぁまぁ、みんな。 いいじゃない。 今日は同窓会なんだもん、楽しくやろうよ」 麻里子の一言でみんな散っていく。 そして席の一番端に小さくなって座っていた俺に、彼女は近づいてきた。 「なんか元気ないじゃん? どうかしたの?」 「別になにも……」 「嘘をつくんじゃないわよ。 分かるんだから」 俺は何も答えなかったけれど。 この場に菅井がいないだけましだ。 あの、進路希望調査の時の光景を、今まで忘れたことが無い。 あの、真剣な表情で自分を見つめる菅井の視線を、忘れられる奴なんかいない。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加